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[生活を快適にする技芸]
「芸術は飯の種にはならない」「芸術は暇人のするものだ」。なんど聞かされたことでしょうか。しばしば富や権威の象徴であるように、生活の必要性からは甚だ乖離した「贅」の側面が芸術にあることはたしかです。しかし、芸術学コースでは、芸術をもっと広く、生活に密着したものとしてとらえます。すなわち、「芸術は生活を快適にする技芸」であると。悲しみに暮れる人に歌を聞かせ励ますのも、傷心に沈む人をダンスで鼓舞するのも、一輪の部屋に飾られた花で病人の心を慰めるのも、みな、そうした技芸としての芸術のなさしめることです。
かつては、いまよりも、祭りや儀礼が生活に密着したものとしてありました。もちろん、そのときも、そのような技芸としての芸術は欠くべからざるものでした。たとえば、太鼓を叩き雨乞いをし、竹笛を吹き亡霊を慰撫し、踊り狂っては見えない精霊たちを招きよせました。旧人類(ネアンデルタール人)にすでに芸術活動の痕跡があるとされていますが、芸術は人類の誕生とともにあったといっていいほどに、人類にとって、まさしく本質的な活動です。芸術学コースで、芸術を深く学んでください。
[芸術と感性]
芸術には感覚がつきものです。絵画を見たり、音楽を聞いたり、感覚的な作用を一切ともなわない芸術を想像することはできません。芸術は、感覚を通じて、生活を楽しいものにしたり、人にカタルシス(浄化)の感情をはたらかせるものです。しかし、感覚と切っても切れない関係にあるとはいえ、芸術はたんなるフィーリングでも気分でもありません。芸術は、どちらかといえば、感覚的な放恣を戒める側に立つものです。まして、酒池肉林の官能からはほど遠いものです。しばしば、偶像破壊が叫ばれるのもまったくゆえなきことではありません。つまり、感覚(感性)領域といえども、無法地帯があるわけではなく、そこに、むしろ、固有なロゴスがあると思われます。芸術学を学ぶものは、そのロゴスの探求者でなければなりません。芸術学は感性の学であります。
[芸術の三つの形態]
さて、芸術の領域や分野を考えるうえで、われわれはすこし複雑な現実のなかにいるということができます。そもそも、「芸術」は明治期に導入された概念です。つまり、「芸術」という言葉は、その時期に、ヨーロッパ語の「アート」もしくはそれに「ファイン」という形容詞をつけて「ファイン・アート」という概念が導入され、訳語として定着したものです。「ファイン・アート」という概念は、もちろん、ヨーロッパの文化的な土壌から発生した歴史的な所産ということができます。素性からいえば、もともとそのような土壌のない日本に、「芸術」はいわば外から導入され、大学などの機関での教育を通じて、今日、さほど違和感のない程度にまで定着したものにほかありません。
「芸術」が導入される前にあったのは、一般に「、芸道」とか「芸能」とか呼ばれているものです。つまり、茶道や華道や能楽です。いずれも、家元制度などの世襲的な制度のもとで、師資相承、今日まで、伝えられてきたものです。そして、「芸道」とか「芸能」が、誕生はともあれ、確立したのはおおむね中世もしくは近世ということができます。それぞれ、様式化された美としてそれらを確立した天才たちが現れました。すなわち、能楽における世阿弥、茶道における千利休です。あるいは、庭における夢窓疎石です。
そして、さらに、「芸道」とか「芸能」が確立する以前には、いろいろな年中行事をふくむ祭りがありました。収穫や息災を祈る儀礼や祭りです。それらは、時代とともに変化しながら、現在まで、正月をはじめ、節句などの行事に、引き継がれているものです。
以上、おなじように、感覚を通じて生活を快適にする技芸でありながら、いわば出自を異とする三者が、日本において、混在しています。普通は、そのような状態を自覚的に意識することはありません。しかし、無意識のうちに、相互に、不必要な誤解や偏見を生んでいるかもしれません。芸術学コースでは、三者のうちのどれをも尊重しながら、それらの共立の道を、あるいはそれらの創造的な融合の道を、探っていきたいと考えます。
[創造的集団]
最後に、通信教育部には、全国の各地から、いろいろな学生が集まってきています。まさしく、多地域・多世代を地でいくコースです。学生たちの職業や人生経験も多種多様です。どうでしょうか。そのような集団は魅力的ではないでしょうか。多様な価値観で彩られた学生たちからなる集団は、その内に、とてつもない文化的創造力を秘めています。同世代の集合にしかすぎない通学部とは比べるまでもありません。どうか、通信教育部・芸術学コースで学んでください。芸術でもって、身も心もブラッシュアップしてください。
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『コースガイド』を使って履修計画をたてましょう
通信教育では通学制と異なり自分で履修プランをたて学習をすすめることが重要です。
入学許可後は、airU学習ガイドやシラバスを確認して履修計画をたてましょう。airUマイページでは履修プランを作成することができます。
本学通信教育課程では「履修登録」がありません。年度途中に新規科目に取り組むことも可能です。
また、履修状況や学習環境の変化によって履修プランをたてなおし、学習をすすめていくことができます。
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